2011年5月10日6時8分
福島第一原発から半径20キロ以内の「警戒区域」への一時帰宅が10日から始まる。これを受け、環境省と福島県は区域内に残されたペットの救出に乗り出す。一時帰宅した際にペットを玄関先につないでおくなどしてもらい、11日以降に県職員らが連れ出しに行く。
ただ区域への立ち入りが禁止されてから2週間以上。どれくらいのペットが無事かはわからない。
同省によると、対象になるのは、原則として犬と猫。他の動物についても「柔軟な対応を検討する」としている。一時帰宅の際の連れ帰りは禁止されているため、一時帰宅から戻った後に救出を申請、ペットの居場所も申告する。
救出後は20キロ圏の外で放射線量を測り、獣医師が健康状態を確認。放射線の数値が高い場合はウエットティッシュで体をふくなどして除染する。飼い主が避難所にいるなどして引き取れない場合は、当面、県のシェルターで無料で飼育する。
同省によると、震災前、20キロ圏内には少なくとも約5800匹の犬が飼われていた。うち何匹が区域内に残っているかは把握していない。猫の数はわかっていない。
原発事故後、飼い主や動物愛護団体が20キロ圏内に入ってペットにエサをやるケースがあったが、先月22日に警戒区域が設定されてからは、こうしたエサやりも途絶えている。環境省にはペット救出を求める電話が1日数十本かかっている。過酷な環境の下、「どれくらい生き残っているかはわからない」(同省)状況だ。
一時帰宅の際にペットの死がわかっても、亡きがらは回収しない。「放射能で汚染されたがれきの処理方法も決まっていないなか、圏外に持ち出すのは難しく、衛生面でも問題があるため」という。
一方、福島第一原発1〜4号機のある同県大熊町は11日にも、町独自で残されたペットへのエサやりをする方針。町は「住民の要望が強いため」と説明している。(長富由希子)